愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~


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もしも願いがかなうなら……もう少しだけ傍にいたい。

そう願うことを許してほしいと今、心底思っている。


「これでよかったのかな?」



そう高い空を見上げながら呟いたのは香椎くんだった。


紫丞の家の庭園を私は香椎くんと二人で歩いていた。

それもこれも香椎くんから二人でゆっくり話がしたいと提案されたからだった。


「これでよかったと思うよ」


私は香椎くんの後ろをついて歩きながらそう答えた。


香椎くんがそんな弱気なことを言うなんて、ちょっと意外だった。

それくらいきっと香椎くんにとってはナーバスな問題で、ずっとずっと抱え込んできた重荷だったのかもしれない。


いろんな人を不幸にしてきた紫丞のおばあさんが、まさか私の祖母のお姉さんだっていうことも、実は私にとっては初耳だった。

いろんなことを私は知らずに生きてきたから。

ううん。

いろんなことをみんなが隠して、私を自由にしてくれたから。

だから私は幸せに笑っていられたんだと……いろんなことがわかってきた今だからこそ理解できた。


香椎くんはふと立ち止まると「そうかな?」と私のほうを振り返って確認するように聞いた。


不安が大きいんだ、香椎くん。


本当にこれでみんなが幸せになれるのか。

おばあさんにとって最善だったのか。

もっと別のやり方があったのか。


そんな思いが香椎くんの中でぐるぐるしているように思えた。