「私を許してちょうだい、峰子……信じていたはずのおまえを信じきれなかったこのバカな私を……どうか許してちょうだい」
「奥様、私はこうしてお話しいただけるだけで十分幸せでございます」
「峰子……」
香椎くんがゆっくりとその場を離れ、こちらへやってくる。
『行こう』
その瞳がそう言った。
私は黙って頷くと部屋を静かに出ていく香椎くんの後姿を追った。
そのあとを香澄さんと執事さんも追ってくる。
全員が部屋を後にし、ゆっくりと執事さんが閉めるその扉の奥で二人の老女がしっかりと抱き合っていた。
だけど私には……二人の若い女性の姿が重なって見えていた。
長い長い歳月をかけて、やっと和解した二人をその場に残し……私たちは静かに立ち去って行ったのだった。


