愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~

「奥様は三度の流産でお心もお体も疲弊しておられました。そこでご主人様は奥様が一番に可愛がっていたという私に……お二人のお子様の宿り場になってほしいと。そう頼まれたのです。

もちろん、私もお断りはいたしました。私も子供など産んだことなどないほど若い身の上でしたので。

それでも決意したのは、ご主人様の奥様を思うそのお心に打たれたからでございます」


そこまで一気に話すと、女性はおばあさんのもとにゆっくりと近づいて行った。

そしてその場にひざまずき、床に頭をこすりつけるようにして「申し訳ありません」とそう誤った。


「もっと早くお話しできれば、ここにいる綾渡のお嬢様のお母上様も死なずにすみましたのに……奥様を長く苦しめることもなく、香澄も……幸助様も……本当のお母様とおばあ様に愛していただけたのに……」


涙を流し続け、そう続ける女性の肩を優しく抱いたのは香椎くんだった。


「峰子さんは病を患い、ずっと山奥の施設に入所されていたのです。それもおじい様のご意志だったのですが……もう……峰子さんに残された時間はなく……今日は無理してここへお越しいただいたのです。

おばあ様、貴女に真実を知っていただくために――」


おばあさんの顔は蒼白になっていた。

今まで信じてきたものがその足元から崩れ去っていく……そんなふうに見えた。

立っているのもやっと……そんなおばあさんはゆっくりと屈み、女性を見つめた。


「私の子を……ずっと大切に育ててきてくれたの、あなたは?

自分の人生を……投げ捨てて……こんな私のために?」

「まともに侍女の役割もできない、いつ放り出されてもよかったできそこないの私を妹のように可愛がってくださった奥様に恩返しするには……まだ足りないくらいでございます」

「峰子……」


おばあさんがゆっくりと女性の手を取った。

その顔は涙に濡れ……見ているこちらが胸を締め付けられるほどだった。