静まり返った室内に残ったのは私たち三人とおばあさんだけ。
最初に口を開いたのはやはり香椎くんだった。
「おじい様はずっと悔やんでおいででした」
その言葉におばあさんが顔を上げた。
悔しさで唇を噛みながら、それでもその一言が気になったらしく。
おばあさんは黙って香椎くんを見つめていた。
「その石を綾渡の麗佳様に託したことを……亡くなるその瞬間までずっと悔やんでおいででした」
香椎くんはそう言うとゆっくりとおばあさんに近づき、その手元に置かれていたネックレスをスッと取り上げて見せた。
「おじい様はただ守りたかったんです。美耶子さん、貴女を……オレみたいな孤児を養子にしたのも、石を綾渡の麗佳様に託したのも、貴女を紫丞という家の束縛から解放するためだったんです。
正妻なのに嫡子を産めないと悩ませ、本来持つべき石も妹である麗佳様のものになった。
結果的におじい様のやったことはすべて仇になり、貴女は貴女の存在意義を保つために家に固執しつづけることになってしまった。
そのことをおじい様はずっと悔やんでおいででした」
「そんなこと……」
信じられるわけがないと……おばあさんは続けた。
先ほどまでの射るような強い瞳ではなく……どこかさみしげで頼りなげな瞳がそこで揺れていた。
香椎くんは小さく微笑んで「そうですね」とさみしそうにこぼした。
「もうおじい様はいませんから……」と――


