「孝明さん。あなたが持っているものを素直にお渡しなさい」
一つ上からの物言いに、けれど香椎くんはひるむことも屈することもなかった。
小首をかしげて見せながら、おばあさんがさっき口にしたセリフそのままを繰り返して見せた。
「嫌だと答えたらどうするんです?」
ちょちょちょちょっと香椎くん!!
どうしてそんなに好戦的で挑発的なわけ!?
「よほど腕に自信がおありなのですねぇ、あなたは……」
あきれたような声が返ってくる。
周りを取り囲む男たちから殺気みたいなものを感じ、私はギュッと拳を握りしめた。
そんな私の隣に、すっと執事さんが移動してくる。
それを見計らったように香椎くんがゆっくりと立ち上がった。
「欲しいのならあげますよ、こんなもの。
オレには無用なものですからね」
懐から碁石のネックレスを取り出すと、机の上を滑らせるようにして投げ渡した。
見事なまでに石は転がり、おばあさんの手元に届く。
おばあさんはゆっくりとそれを取り上げると、じっくりと眺め、それから私たちを見て笑った。
「潔さもきちんと学んだのですね、あなたは」
「そうですね。どこの馬の骨ともしれない子供を引き取って育ててくれた偉大なおじい様からしっかり学ばせていただきましたよ」
そういう香椎くんの笑みが少し曇って見える。
っていうか……どういうこと!?
これって香椎くんのことなの?
香椎くんって……紫丞の血縁じゃないってことなの?


