香椎くんはおばあさんを見据えると「そろそろ潮時にしませんか?」と言った。
「もうこれ以上、家にこだわるのはやめませんか?」
静かに。
低く重い香椎くんの声が響いた。
「嫌だと私が答えたらどうするのです?」
そうおばあさんが答えた瞬間、奥の扉から黒スーツの男たちがゆっくりと部屋に入ってきて、部屋中を取り囲んだ。
二十人くらいいる。
その男たちに完全に包囲される私たち3人。
そりゃ、香椎くんも執事さんも強いだろうけど。
これって……まずいよね?
それに加えて、絶対に私足手まといっぽいし。
「相変わらず用意周到ですね」
「だから報告はいらないと言ったのですよ。
それに、普段姿を見せないあなたがノコノコ出向いてくれるのを私が指をくわえてただ見ていると思ったのですか?
私はいつでもあなたを亡き者にしようと思っていたんです。それくらい聡明なあなたなら、知っていらっしゃったでしょう?」
にっこり。
笑い方は本当にソフトなのに、言っている内容が物騒すぎる。
っていうか。
香椎くんのおばあさんは香椎くんを殺したいってこと!?
じゃ、今もそのチャンスさえあればってこと!?
香椎くんを見る。
香椎くんは足を組んだまま余裕たっぷりな笑みを浮かべている。
組んだ足の上に、両手まで組んで見せている。
なんでこの状況下でそんなに余裕なの!?


