「決着、つけに行くんだよね?」
くるり。
振り返って香椎くんを見る。
鏡越しじゃない香椎くんは一瞬驚いたような顔を見せたけど、すぐにややぁとその表情を崩し、私の顔に自分のそれを近づけた。
それからそっと頬に唇を落とし「ご褒美」と言った。
「良く出来たらご褒美もらえるかな?」
くすッ。
そうやって笑う香椎くんがいつもの香椎くんに戻るから、私も元に戻ってプッと顔を膨らませる。
「エロはなし」
「……それが一番モチベーション上げるのにねぇ」
クスクス、クスクス。
オオカミの皮を被った執事様ならぬ当主様はそうやって笑う。
「では行きますか?」
「参りましょう、セリ様」
香椎くんがそう言って腕と身体の間に僅かな空間を作る。
腕を組んでのエスコート。
そう言わんばかりに顔を少しだけ上向けて。
背筋を凛と伸ばした香椎くんは本当に、威厳に満ち溢れた『紫丞』の『御当主』様の顔になる。
「では、よろしく」
私はその腕にそっと自分の腕を絡ませた。
迷いはない。
だって香椎くんと一緒だから。
だからこの先、どんなことになろうと私は受けいれるし。
その現実を直視しようと思う。


