香椎くんは言った通り、車を家へと走らせた。

実家に着くなり、家にいた人たちの反応と言ったら凄すぎて。

自分でも本当に心底驚いたと言うのが正直な気持ちだった。

だって……私は知らなかったから。


「お嬢様!! なんて、なんてこと!!」

「お嬢様!! お身体は大丈夫ですか!? 怪我などされておりませんか!!」

「お嬢様!! ああ、お嬢様!! どうしてお嬢様がこんなことに!!」

「お嬢様!! これでは奥様にどうやっても顔向けが出来ません!!」

「こんなことした輩をこの手で絞殺してやりたい!!」


なんてことを口にする人たちで私と香椎くんは取り囲まれてしまったわけで。

っていうか。

中には本気で泣いている人もいて。


私、ずっと誤解していたのかもしれない。

殻に閉じこもって、本当に見ていなかったのは自分だったのかもしれない。

自分のことを大事に思って、ずっとお世話をしてきてくれた人たちがこんなにもいて。

こんなに自分はいろんな人に愛されて。

見守られて。

大事にされていたんだっていうことに今更ながらに気づいた。


「セリ!!」


その声に、山のようにたかっていた人の群れが掃けて行く。

血相変えて走って来たのは言うまでもなく父親で。

私の変わり果てた姿に言葉さえ失って、ただギュッと抱きしめられた。


「怪我はないな」

「うん、香椎くんが来てくれたからね」

「……それにしてもひどい」

「……これは彼のせいじゃなくて、私自身がやったことだから。

彼は責めないで」


私の隣で黙ったまま立ちつくす香椎くんに目を向ける。