「おまえ、執事だろ!?
孝明って……なんなんだよッ!?」


私よりも動転しているらしい岳尚がそう二人に食ってかかった。

当の二人と言えば、本当に涼しやかで。

ううん。

冷ややかと言ったほうがいいのかもしれない。

そんな視線を岳尚の方に向けながら、小さく笑った。


「紫丞孝明って聞こえなかったかな?」

「おまえは……おまえは執事だろうが!!」


どうしても納得がいかないらしい岳尚がさらに叫ぶ。

けれど、香椎くんは小首を傾げ


「ならいいんだけどな」


とシレッとした口調で答えて見せた。


いつもの香椎くん。
私の知ってる香椎くん。

誰にもへつらわず。
自信に溢れ。
どこか高飛車な香椎くんがそこにいるのに……



この人は『紫丞孝明』その人なんだ!!



「じゃ、そこにいる『紫丞孝明』はなんなんだよ!!」

「オレの優秀な執事だよ」

「な……!?」


あまりのことに言葉が続かない岳尚同様、私も言葉を失っていた。

香椎くんが当主で。
当主だった彼が執事で。


私、もうわけわかんない。