愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~


トイレなんて名目だけで、実際にしたいなんて思ってない。

全部、全部見透かしたようなあの目にイライラするし。

あの言い方になにかむしゃくしゃするし。


ギリッと唇を噛みしめる。


これは私じゃない。

常に完璧なお嬢様としてやり過ごしてきた。

それなのに、ちょっとしたことで簡単にあの男はそんな私の牙城を崩していく。

あの男は何者だろう?

ただ一つ分かるのは、もの凄く扱いにくい相手だということだ。

私の先の先を読んでいるかのように。

いや、たぶんそうなんだ。

大人の男だから……というだけでなく、なんかわからない経験値みたいなものをどっさり抱え込んでいる気がする。

憶測とか、推測の域の話ではあるけれど。


でも、はっきりしたこともある。

あの男は最低最悪の執事である、ということ。


「負けないんだから!!」


ギリッと爪を噛み、奥歯を噛みしめる。


「ぜぇったいに、あんなクソ執事なんかに負けないんだから!!」


その声が聞こえたのか、聞こえないのか、それは定かではないけれど……


なんとなく、外で香椎くんのイジワルな笑顔が咲いたような気だけはしたのだった。