「チャンスは3回まで……ということね」
「チャンス……ねぇ」
ニヤリ。
またしてもこの笑い方。
なにか腹に持っていそうだということだけは分かる。
横目でちらりと紫丞孝明を見遣る。
紫丞孝明はただじっと私と岳尚を見つめて黙している。
「一つ、キミたちにハンデをあげるよ」
パチン。
岳尚はそう言うと右手を高らかに上げて見せ、その後で指を鳴らして見せた。
その音とともに、ゆっくりと壁際の深緑色のカーテンが開き。
そこからまたしても見慣れた顔の人物が姿を見せた。
「香純さんッ!!」
やってくる人物は赤紫色のシンプルなドレスに身を包んだ香純さんだった。
怒りが腹の底からふつふつとこみ上げる。
けれど……そんな私を『ダメだ』というように紫丞孝明の視線が制していた。
ここで怒りに身を任せて冷静さを失ってはいけないと。
彼の瞳は告げていた。
グッと拳をテーブルの下で作り、必死に冷静なフリをする。
彼女のせいで、香椎くんは傷つき。
今も病院のベッドで痛みに耐えているはずなのだと。
そう思うと込み上げてくる怒りは自分の胸の中で渦を作る。
香純さんは私を一瞥すると、スッと岳尚に寄り添うようにその隣に立った。
彼女は真っ赤なベルベッドのリングクッションを抱えるように持っており。
岳尚はそんな彼女の手の上のクッションの上からある物を取って見せた。


