冷たい指先が上気する頬にそっと触れる。
見つめた先の香椎くんの顔が、また徐々に近づいてくる。
それだけで胸が激しく揺れて、ドクドクと心臓が全身に血を送り込み続ける。
ダメだ。
ダメだ。
ダメだ。
流されちゃ絶対にダメだ!!
ギュッと目をつぶって、ほんの少しだけ俯いた。
そんな私の耳元に声が落ちてくる。
「はやくしないと、漏れちゃいません?」
一気に現実が攻めてきて、私は閉じていた瞼を高速スピードで跳ね上げた。
見上げた香椎くんは、これ以上はないっていうほどに意地の悪い、いや、底意地の悪い男の顔をしていた。
なんだ、この男は!!
人を弄んで楽しんでるのかよッ!!
っていうか。
っていうか。
「さっさと外へ出ていけっ!!」
そう吐き捨てて、個室の中へ身を滑り込ませた。
締め切った扉越しに香椎くんの出ていく足音だけが小さく聞こえる。
モヤモヤする。
悶々する。
イライラもする。
なんだ、なんだ、あの執事ヤロー!!


