「綾渡には次を担う男子はいませんからね」
その言葉に私はキュッと唇を噛みしめた。
突き付けられる現実に爪が食い込むほどに固く拳を握りしめた。
一人っ子の自分。
だから大切に。
誰もが自分に取り入るように。
壊れ物を扱うように。
こびへつらい。
同じ顔で。
同じ言葉で。
近づいては騙そうとしていた。
『綾渡の一人娘』
それを利用するために――!!
そして九条という大財閥も今、そうしようと手を伸ばしている。
ふと紫丞孝明を見る。
彼は何とも言えない顔で私を見た後、また瞳を閉じ、小さく息を吐いた。
それから力強い目を開くと
「丁度いい時期でしょう」
そう言った。
「どういう意味です?」
尋ねた私に彼はほほ笑み一つ浮かべることなく言った。
「自分と向き合うときが来たのではないですか?」
と――


