「無事……なのね」
唇が微かに震える。
残った最後のビジョンがあまりにも悲痛だから。
背に矢が刺さったまま、突っ伏すように倒れた香椎くんのあの姿を思いだすだけで。
苦しくて。
苦しくて。
本当だったら今すぐにでも彼の傍に行って、彼の無事をこの目で確認したいくらいだけれど。
でも、私の前に腰を下ろした謎の青年の顔があまりにも固いものだったから。
そんな想いも願望も。
胸の奥深くに閉じ込めるしかない気がした。
「無事です。
ただ……」
ただ?
「少々騒ぎが大きくなりすぎて、私だけの力では押さえきれなくなりましたので。
彼にはしばらく養生も兼ねて静かにしていただくことにしました」
あなたには大変申し訳ないのですが。
そんな言葉を添えて青年は言った。
「あなたは……誰!?」
急に不安が襲い、私はそんなことをこぼしていた。
青年は黒光する瞳にさらに力を込めるようにして私を見ると。
「孝明」
ゆっくりと。
絶妙な間を取って彼は告げた。
「紫丞孝明(しじょうたかあき)。
紫丞家現当主は私です」
あまりのことに自然に身体が強張った。


