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「……しい……」
くん……紡ごうとした言葉で、私はハッと我に返った。
勢いよく瞳を開いてみれば、あまりの眩しさに開いた目が自然に細くなった。
徐々に光に目が慣れて、ゆっくりとあたりを見回す。
革のシートの弾力はなく、もっと滑らかで、ソフトなものだった。
銀色の絹のシーツは馴染みのもので、香りも肌触りも全て自分の身体に刻みこまれているものだった。
「私の……部屋……」
帰って来ていたんだとホッとする。
と同時に、今自分の置かれている状況を必死に追いかける。
何時何分?
一体あれからどれくらいの時間が経ってるの?
視線を素早く走らせて、学習机の上に置かれた目ざまし時計を確認する。
20時13分。
「夜……なの!?」
昼休みの出来事だったはずなのに、もうあれから約8時間も経過している。
その間自分はずっと眠っていた……ということなのだろうか?
「香椎くんは……!?」
頭の中でリプレイされる香椎くんとの最後の場面に、ギュッと胸が締め付けられた。
刹那、響いたのはノック音。
つつましやかに響くその音に、私はごくりと息を飲み込んだ。


