「信じてもいいのね?」

「あなたが彼を信じてくださったのならば、我々はそれと同じく全力でそのお心にお答えします」


だからどうぞご安心を……そう言うとその人は私に『行って』と言うようにその先の黒のセダンに目を向けた。


「この人を絶対に死なせないで」


コクリ。

小さな頷きだけを確認して私は私を待つセダンに向かって走り出した。

不安がないわけじゃない。


香椎くんを誰とも知らない相手にゆだねるなんて、胸が潰れてしまいそうなくらい不安で仕方がない。

それでも今は信じるしかない。


私はあの瞬間にもう選択したんだから。



香椎くんがどんな人物で。
どんな事情で。
どんなことを思っていようとも。


私は私といる香椎くんを信じると――!!


「戻ったら……無事に戻ったら全部教えてもらうから」


零れた言葉が香椎くんに届くなんて思ってないけど。

届いてほしいと切に願う。


セダンの扉が開かれて、中へと飛び込む。

ほんのりとした甘い匂いが車内を満たしていた。

車は二人を置いて、車は走り出す。


「香椎……く……ん……」


走り出した車の中、揺らいでいくのは見慣れた風景。

疑心を抱く間もないまま……私の意識は真っ白な世界へと落ちて行ったのだった。