愛して 私の俺様執事様!!~執事様は秘密がお好き~


岳尚様は殴られた顔面押さえて悶え苦しみ、そんな彼を一瞥してから香椎くんは私の目の前に立膝を突いた。

それから転がっているバックの脇でビービー泣き続けているテントウムシにそっと触れる。

テントウムシはピタリと泣き止み、岳尚様の悶絶する声だけがその場を支配していた。


「大丈夫か?」


今、私どんな顔してるんだろう?

香椎くんの顔が見たいのに、なんかちゃんと見れないんだよ。


「怖かったな。

『また』……遅くなって不安にさせたな、オレは……」


香椎くんの腕が伸びてきて、私はギュッとその腕の中に閉じ込められた。

岳尚様のときとはまるで違う。

熱い、熱い抱擁。

ドクドクという香椎くんの心臓の音がすぐ傍でする。

耳元に熱い息がかかって、心臓が口から飛び出してしまいそうなくらい、私の心が高揚しちゃう。


「もう絶対におまえを泣かせないと誓ったのにな、『あの日』……」


よくわからないことばかり。

香椎くんは呟き続けている。

何を言ってるんだろう?

私と香椎くんは初対面じゃない?

なんで『また』とか『あの日』とか言ってるの?


「……くっそ……」


悶絶していた声が少し鈍り、そんな悔し紛れとも言える声が割り込んできた。