岳尚様が近寄ってきて、私のツインのテールの一つを思いっきり引っ張った。
髪が抜けるかと思うほど強く、きつく……
あまりの痛さに顔はゆがめたけど、声は挙げなかった。
テントウムシはまだ鳴り続けている。
それを覆うほど大きな音がし始めたことに、目の前の男が焦り始めた。
「なんだと!?」
観覧車の外。
ブロロロロロとプロペラの回る音とエンジン音。
白い物が観覧車のすぐ傍に姿を見せる。
「九条岳尚!!」
はっきりと。
しっかりと。
聞こえてきたのは香椎くんの声だった。
「セリに手荒なマネしてみろ!!
地獄に落とすなんてだけじゃすまさねーからな!!」
ヘリコプターに乗る白いライダースのジャケット姿は間違いなく香椎くんで……
その姿を見た瞬間に、目頭が熱くなって、滲んで、髪の痛さも忘れてしまった。
「おまえに何が出来る!!
そういうことはこの場に来てから行ってみろよ!!
地上まで降りるにはまだ時間がある。
おまえの目の前でこの女、ヤッテやるよ!!」
再びテールに力がこもり、引っ張られ、私は目の前の男の腕の中に閉じ込められる。
乱暴な手が私のショートパンツを脱がそうとし始める。
「ぶっ殺す!!」
聞こえた瞬間……私はそこから目が離せなかった。
「やめて!! 香椎くん!!」
叫んだときにはもう遅く……香椎くんの身体はヘリコプターから離れ、ダイブの姿勢をとっていた。


