心配?
そんなもんじゃないって!!
香椎くんになにかあったらって思ったら、胸が潰れてしまいそうなほどに苦しい気持ちでいっぱいになる。
なにかあったら許さない。
たとえ相手が『九条』の家の人間でも。
それが『名ばかり』の『婚約者』であっても。
「ねぇ、あなたはなんの疑いも抱かないの、あの男に?」
何を言い出すのか?
岳尚様はなんとも冷ややかな瞳をツィッと私に向けた。
見透かすような視線。
見透かされそうな予感。
ドキドキと胸の鼓動が速くなる。
キキタクナイ。
キイチャダメ。
どこかで誰かが言っている気がするけど、これは幻聴?
「突然現れて、突然専属執事ですって言われて、素直に受け入れて。
得体のしれない男に身も心もグラグラ来ちゃって。
あの男がどんな男なのか、知ろうともしないで『私の執事様』を信じこみ、言いなりになってもいいのかなって、『未来の伴侶』は思うのですよ、セリさん」
岳尚様は小さく笑い、ツインテールの一つに手を掛けた。
「アイツの正体、知りたくないの?」
ドキンッ!!
ひと際大きな音を立てた心臓。
聞かれたくないし、知られたくなくて、私は岳尚様の手を振り払った。


