「大丈夫ですか、セリ様?」
私の隣を並んで歩いていた香純さんが伺うような小声でそう言った。
「あ……ああ、大丈夫です。大丈夫」
「そうですか。
それならいいのですけれど」
彼女はホッとしたように小さくほほ笑む。
「あの……すみません。
本当は私がここに来るべきじゃないって分かっていたんですけど……」
「そんなことないですよ」
「でも、セリ様にはもっと『仲の良いお友達』がいらっしゃるのではないですか?」
その言葉に私の胸がズキッと痛みを覚えた。
『仲の良いお友達』?
思い当たる人も、思い浮かぶ人もいない。
「私にはそういう人、いないから……」
友達と呼べる相手がいない。
私に近づいてくる相手は私の持っているものに興味があるだけで、私じゃない。
こんなときに思いだしたくなかったな、こういう気持ち。
「じゃ、私と一緒ですね」
彼女はものかなしげに眉尻を落とし、ほほ笑みながらそう言った。


