「そんな『手の込んだ』こと、するとお思いですか?」
「九条家の『おぼっちゃま』なら、それくらいの『下準備』はされたのかと思いまして」
「セリさんには『普通』のデートを楽しんでもらいたいのです。
特別扱いは慣れ過ぎて『お疲れ』でしょうからね」
そう言いながら岳尚様は私を見、含んだ笑みを浮かべて見せた。
その目が妙に怖い。
『なんでもお見通し。キミの本性だってリサーチ済みさ』
そんな声なき声が聞こえてくるみたいで、私は岳尚様から目を逸らし、目の前の食べ物を次から次に口に放り込んだ。
お願いだ。
早くここから出してくれ!!
じゃないと息がつまりそう。
チラリと香純さんを見る。
同じ思いでいるのか、彼女はずっと俯いたまま黙っている。
そんな彼女と目が合って、私は微苦笑してみせた。
彼女も同じように困ったように小さく笑みを返す。
ああ、そうだ。
エターナルランドに着いたら、極力彼女と一緒にいよう。
彼女と一緒に行動して、二人からちょっと離れちゃおう。
そうしたほうが差しさわりがない気がする。
そりゃ、香椎くんとデートできなくなるのは残念だけど、こんなトゲトゲしたオーラぶっ放している彼とデートして楽しめるかどうか分かんないし。
岳尚様だって、彼女と一緒に行動したら
『ダブルデートで仲のいいお友達を選んだボクが間違いでしたね』
なーんて許してくれちゃうかもしれないしね。


