―史朗と二朗―



コツ…


コツ…


コツ…


コツ…


コツ…


コツ……ガチャッ…!



「兄貴!!」


事務所を開けると、ソファーに座っていた二朗がこっちに来た。


「ただいま二朗。苦労かけましたね。でも…この通りです。」


笑って言って袖を捲り、右腕を見せた。


「はぁ~…!これはすごいな!本物の腕と変わらねぇよ!さすがあの唯香の相棒が言ってただけある!」


二朗は私の腕を触って言った。


「そうですね。あの方も素晴らしい女性でした。唯香様には負けますがね。今度…美味しい紅茶でもご馳走することにしましょう。」


荷物をソファーに置き、私の机に置いてある晴と由莉恵の遺影に手を合わせた。



私は元気です。


またこれから頑張りますので、そちらで2人仲良く私達を見守っていて下さい。



ガチャッ!!


「二朗さん!!」


事務所のドアが開き、小学生の高学年くらいの男の子がぬいぐるみを持った女の子の手を引いて来ていた。


「こら!この前も言っただろ?お前達の気持ちはわかるが…戦い方を教えている暇はないんだ。」


私は机にある飴玉を2つ手に取り、2人の前でしゃがんで目線を合わした。


「どうぞ。」


女の子の手を取って飴玉を渡した。


「あなた方は…なぜ強くなりたいんですか?」


私は男の子に聞いた。


「両親が…強盗に殺された…!絶対…強くなって…復讐してやるんだ…!だから…強くなりたい…!」


涙を堪えて私に言う。


私は男の子の頭に手を乗せた。


「私達は護り屋という仕事をしています。貴方の望むような力は…私達は持っていません。ですが…貴方が誰かを奪われない為に真剣に護りたいと言うのであれば…いつでも来なさい。ちょうど人手が足りなかったんです。ゆっくり考えて…またここに来なさい。」


そう言うと男の子は事務所から出ていく。


すると、女の子は私の方を振り向いた。


「…ありがとう…。」


そう言って男の子と共に帰っていった。