ん…うん…。


目を開けると、眼前に広がったのは限りなく白い空間だった。



「ここは…?」


辺りを見回すが何も無い。


そうか…。
俺は死んだんだったな。



『よぉ。御主人様。』


声がした方を振り返ると、人間の姿をしたアビルが居た。


「何だよ。さっさと食えよ俺を。お前が一番望んだことだろ?」


腕を広げて言った。


『最後に何か言い残すことでも…あるかと思ってな?お前は俺に食われれば…何もない場所へ行く。考えも、感情も、体も、記憶も全て無くなるんだ。本当の地獄ってやつだ。』


アビルは笑って言う。


それが契約者の運命か…。


「いいよ。何もかも無くなるなら…何言ったって一緒だろ?」


笑って言った。


『相変わらず人間らしくねぇ奴だ。死ぬのが怖くないのか?地獄が怖くないのか?』


「俺は死ぬのなんてどうでもいい。人間いつかは死ぬんだ。それが早かろうが遅かろうが…天国だろうが地獄だろうが…同じ『死』だ。桜と皆さえ幸せになれれば…俺は幸せになんかならなくていい。」


その場に座って言った。



「ずっと…そう思っていた。でも、いざその状況になってみると…やっぱり怖いな。幸せになりたいとか…いろんな思いが溢れ出す。俺もきっと…輪の中に入りたいんだ。強がってて…いつもその輪を眺めていただけだった。

それが…桜や慎司や沙織や米…
涼風や優や楓…
玲央奈に唯香や辰馬…
史朗と二朗…晴に由莉恵…

その他依頼人やいろんな出会いをしていくにつれ…いつの間にか俺は…輪の中に入ってたんだ。それがわずらわしかったけど…何だかんだ言って…やっぱり幸せだったと思うし…楽しかったんだなって思えるよ。

まぁ、今更だけどな。」


俺はアビルを見た。