―薫―



『あんたも逃げてれば…幸せな生活とやらが楽しめたんじゃないの?』


黒いドレスを身に纏う、髪の長い女の姿になったデスアビスが言う。


俺はタバコをくわえて火をつけた。


「俺はお前を殺す。そう言ったはずだ。お前はまだ死んでない。だから向こうに帰る理由がない。それだけだ。」



心臓の痛みが増してきている。


どうやら…あと少しで俺は死ぬみたいだ。


―『後悔してるか?俺と組んだこと。』―


アビルは笑って言う。


後悔?
してるに決まってんだろ。


でも…今更何も言わねぇよ。


最後まで頼むぜ?アビル。



―『ハハッ!望むところだ。楽しもうじゃねぇか!』―


俺は悪鬼羅刹を握りしめ、デスアビスに向かって構えた。



生きた証なんか何も残してない。


ただ…俺が生きていたことは…皆が覚えててくれる。


それだけで…俺は充分生きた気がする。


1人になり、何の支えもなかった俺を…支えてくれた奴らが居た。



それだけで幸せだ。


人生も…悪くない気がする。



「終わらせるぞ?お前との因縁も…今日で全部無くす!!」



デスアビスに斬りかかった。



『魂喰らいの鎌!』


初期状態の鎌を出し、悪鬼羅刹を受け止めた。


「どうした?体がなかったらその程度の実力しか出せないか?」


笑ってデスアビスに言った。


『私を舐めるな!!』


鎌を押して距離を離した。


『私は再生の悪魔王!どれだけ斬られようが…私は再生し続ける!私を殺すことなど…できはしないんだ!!』



俺はデスアビスの言葉を聞いて笑った。