始末屋



『え…?』


俺は聖水が入った小瓶を開け、思い切りデスアビスに聖水をかけた。


デスアビスはナイフを抜き、後ろに下がっていく。


「アビル…。」


―『お疲れさん。見事な芝居だったな?薫。』―


傷が全て塞がり、血も止まった。



『なぜ…?聖水は…無くなったんじゃ…。』


手の平を見つめ、デスアビスが呟いた。


「いつ俺が無くなったって言った?お前はまんまと罠に引っ掛かったんだよ。

最初にかけようとした聖水は本物。2回目に出した小瓶は…ただの水が入った小瓶だったんだよ。

お前は俺が聖水を手に入れたことを北海道の件で知ってる。だから普通にかけようとしても防がれるとわかっていた。だからフェイクを入れた。お前は絶対餌に食い付くと思ってたからな。

見事に食い付いてすぐに小瓶を割った時…上手く事が運びすぎて笑いそうだったよ。それから念には念を入れて…わざと感情的になったように見せた。

あとはお前が完全に油断しきった所を狙えば…ほぼ間違いなく成功すると確信していたよ。」


俺はデスアビスに近付いた。


「何年もこの時を待ってたんだ。強くなるだけじゃなく…お前との戦いのイメージを重ねてた。

その点お前は強さに溺れ…あぐらをかいて俺との戦いをボ~っと待ってただけ。

上に登りたいなら下を見ることも大切だ。呆然と上だけ見てたら…いつか足元の石に気付かず…転けてしまう。

まぁ…悪魔のお前にはわかんないか。さっさとその体から離れろ。桜の体には…お前みたいな汚い魂は似合わないんだよ。」



体から闇が溢れ出す。


それを必死で体に戻そうとするデスアビス。


『わ…私が…この…私が…負ける…?!有り得ない…有り得…ない…!!』


体から闇が飛び出し、桜の体が倒れかける。


俺は手を伸ばし、桜の体を抱き寄せた。