―優―
俺は闇の中に入ろうとするが、闇の中には入れなかった。
薫……。
「薫は…もう寿命が尽きかけてる…。初めから死ぬつもりだったんだよ。だから…あんなに…薫らしくないこと…。」
そう言って玲央奈君は涙を流して楓に抱きついた。
「ある意味薫らしいわね…。」
涼風さんが呟いた。
「カオルンは…死ぬの…?ねぇ涼風姉さん!」
唯香ちゃんが涼風さんに聞く。
楓は黙って玲央奈君の頭を撫でていた。
史朗さんと二朗さんも黙ったままうつむいていた。
「薫は…。薫は死なないよ!!」
俺がそう言うと、皆は俺を見た。
「薫は…強くて…かっこよくて…誰よりも優しくて……約束をちゃんと守る男だもん…。」
拳を握りしめた。
「楓!玲央奈君!俺達はもう1回戦って…決着を着けるって…薫言ってたじゃん!!」
楓と玲央奈君は下を向く。
「史朗さん!二朗さん!薫はいつでも呼んでくれって…必ず役に立つからって…薫さっき言ってたよ…。」
史朗さんと二朗さんはまたうつむいた。
「涼風さん!唯香ちゃん!薫…言ってたよ?いつも世話になってるから…2人に何か恩返ししないとって!」
涼風さんと唯香ちゃんも悲しそうな顔をする。
「だから…皆…悔しいんじゃない!薫がそういう奴だから…今何もしてあげれないのが悔しいのよ!!」
涼風さんが俺に言った。
「それは違う!!薫にしてあげれることは…ここに居る皆が薫は帰ってくるって信じることだよ!そして帰ってきた薫におかえりってちゃんと言ってあげるんだよ!
それが今俺達が薫にしてあげれること。
だから信じようよ。薫を。」
皆にそう言った。
俺は誰よりも信じてるから…。
ちゃんと帰って来てよ…?
薫……。
