―その日の夜 北海道―
「ふぅ~…。」
俺は旅館の縁側に座って酒を飲んでいた。
隣には麗羅が居て、酒をお酌してくれていた。
「今日は突然来られたからビックリしましたよ。」
麗羅が笑って言った。
「約束してただろ?また来るって。優は今療養中だから連れて来てないけど…約束は守らないとな。」
お猪口に入ったお酒を一口飲んで言った。
「覚えてて下さってたんですね。嬉しいです…。」
麗羅は顔を赤らめて言った。
「今来とかないと…約束守れねぇからな。」
そう言うと麗羅は俺の顔を見た。
「どうかされたんですか?」
俺はお猪口の酒に反射する自分の顔を見た。
「…俺は多分…あと2日で死ぬ。死ねば約束なんてどうでもいいが…わざわざチョコも持ってきてくれたし…世話にもなってる。だから守れる約束くらいは守っておこうかと思ってな。」
そう言って酒を飲み干した。
「なっ…何で…薫さんが死ぬんですか…?」
麗羅が泣きそうな顔をして俺に聞いた。
「たった1人の愛した人を取り戻す為に…今まで頑張ってきた。そのツケが来たんだ。でも…不思議と死ぬのは怖くない。自分勝手かもしれないが…俺の幸せなんてどうだっていいんだ。俺と関わった他の奴らが幸せにさえなればそれでいい。それだけでいい。あとは何も望まない。だから後悔もしてないんだ。」
俺はタバコをくわえて火をつけた。
「…そんなの…!そんなのおかしいです…。薫さんが居るからこその誰かじゃないですか…!薫さんが居なくなれば…悲しむ人はたくさん居ると…私は思います…。少なくとも…私は…悲しいです…!例えそれが…薫さんらしいとしても…私は悲しみますよ…!」
麗羅は涙を流しながら言って立ち上がり、どこかに行った。
