しばらくして麗羅がコーヒーを持ってきて、俺と鳴海はまた話し始めた。
「薫さん…あの時はありがとうございました。薫さんの言葉が無かったら…僕は今こんな風に作品と向き合うことができなかったと思います。本当にありがとうございました。」
鳴海は俺に深く頭を下げた。
「…俺の言葉なんて関係ないだろ。誰がどんな言葉を投げかけても…頑張るのはお前自身だ。今のお前があるのは自分が頑張っただけだよ。俺のお陰なんかじゃない。お前の努力がお前を変えたんだ。だから頭上げろ。人にお礼を言われるような大層な奴じゃねぇんだよ俺は。」
そう言うと、鳴海はゆっくり頭を上げて俺を見た。
「薫さんは…やっぱりスゴい人です。」
「スゴくなんかねぇ。まだまだガキだよ。」
俺はコーヒーを飲み干して立ち上がった。
「どこかへ行かれるんですか?」
鳴海が俺を見て聞いた。
「ここに来た時に会った護り屋に会いに行くんだ。その為にここに来たんだよ。嫌なことはさっさと終わらせないとな…。」
コートを着ながら言った。
下に降り、ブーツを履いて外に出た。
「素直に言うこと聞くと思うか?アビル。」
―『さぁな。それはお前次第だろ。俺に聞くことじゃない。』―
アビルは素っ気なく言った。
そんなのわかってるっての。
しばらく情報を集め、護り屋の事務所を聞き出し、事務所に向かった。
ここか…。
堂々とやってんな~…。
裏路地にあるのかと思えば、表通りの綺麗なビルの中に事務所があった。
とりあえず入るか。
ビルの中に入り、事務所がある階まで歩いた。