その後俺達は表の扇杜に出て、高級スーツ専門店に来ていた。
「いらっしゃいませ。」
店員が丁寧にお辞儀をする。
「薫…こんな所に何の用事?」
優が俺に聞いた。
「決まってんだろ。三浦家当主の記念パーティーは部外者は入れない。招かれざる客はつまみ出される。俺達が依頼を実行するには…ちゃんとした格好で中に入らないといけないんだ。
てことで…店員さん。こいつに適当にスーツ選んでやって。」
俺は優を指差した。
「かしこまりました。」
「えぇっ?!嫌だよ!俺スーツとか堅苦しいの嫌いなんだから!」
優が俺を掴んで離れない。
「仕事だ。しょうがないだろ?」
俺は優を引き離そうとする。
「そもそもスーツ着たってバレるじゃん!!俺達裏稼業の人間なんだから!」
「でかい声で叫ぶなバカ!その辺も理恵が愛とコンタクトして調整してる…。いいから…早く行ってこいバカ…!」
優を蹴って引き離した。
「連れて行っていい。」
店員にそう言って自分のスーツを選び始めた。
―10分後―
「薫~…。やっぱりこれ嫌だよ~。」
グレーのスーツを着た優が俺の方に来た。
中は白いドレスシャツで黒の蝶ネクタイをつけていた。
「似合ってるよ。俺は…これにしようかな。」
黒のスーツを手に取って言った。
「これで会計頼む。こいつは着て帰るからそのままでいい。」
財布を出して言った。
「嫌だ!!着替えて帰る!!」
「うるせぇな。お前も仕事なんだから割り切れ。次文句言ったら首はね飛ばすぞ?」
そう言うと、優は黙った。
「お会計が…150万円ですね。」
150万か。
ポケットから100万出して、財布から60万出した。
「あの…!10万円多いんですけど…!」
店員が慌てて俺に言う。
「仕立ててもらった分だ。あんたにやるよ。」
そう言って店から出た。