―始末屋―
「そんなお袋と過ごして6年経った頃かな。俺と紅葉は孤児院に預けられた。生活は一向によくなる気配も無いわ…借金取りは変わらず来るわ…毎日朝から晩まで働いてるわで…お袋は体壊して死んでしもうた…」
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「楓……紅葉……」
お袋が掠れた声で言って、俺達に手を差し伸べる。
「お母ちゃん…!」
「お母ちゃん死んだらダメや…!」
俺と紅葉は泣きながら手を握った。
「ごめん…ね…。お母ちゃん…イライラして…あんた達に酷いこと…してしまって…本当に…ごめんね…。お母…ちゃん…最低や…ね…。」
お袋は俺達に泣きながら言った。
「嫌や…!紅葉…静かにしてるから…!死なんといて…!」
紅葉がお袋に抱きつく。
「お母ちゃん…!何も…気にしてへんから…!まだ…生きてくれ…!お母ちゃん死んだら…恩返しできへんやんか…!」
そう言うと、お袋は静かに微笑んだ。
「何言うてんの…。こんな…弱い…お母ちゃんと…ずっと居ってくれただけで…恩返しや…!お母ちゃん…幸せ…やった…わ…」
握ってくれていた手から力が無くなった。
お母ちゃんは目を閉じたまま、そこから目を開くことはなかった。
「お母ちゃん…?お母ちゃん…!!」
「嫌…!嫌や~…!!」
俺達はその日ずっと泣き続けた。
不思議なことに、涙はずっと枯れなかった。
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「…いいお母さんだったんだね…。」
優が静かに言った。
「人間は誰かの為と分かってても辛くなるしキツくなる。それは仕方ないことや。心だって上手いことできてんねん。負荷をかけたらその分何かで補わないかん。お袋は何も無かった。だからこそ…俺達やったんやと思う。
俺は…あの人は悪い人間やないって今でも信じとる。ただ心が弱ってただけなんよ。」
