―今から6年前…涼風―
「いってきま~す。」
通学カバンを持って、憂鬱になる場所へと足を運んでいく。
義務教育って何であるんだろ?
毎日行きたくもない所へわざわざ足を運んで…楽しくもない学校生活を強要され…一体あんな場所で何が学べるんだろ…。
「おはよ!涼風姉さん!」
歩いていると、幼なじみの唯香が私に後ろから声をかけた。
「おはよう。あんた嬉しそうね~。学校楽しいの?」
私が聞くと唯香は首を横に振る。
「こうやって涼風姉さんと同じ学校に行けるのが嬉しいだけ~!」
唯香は笑顔で言う。
私は中3…唯香は中1。
今年からようやく私と同じ中学に入学したばかりだ。
「でも唯香が居るだけ学校もマシになるわ。正直もう学校行くのも面倒だし。」
私はアクビをしながら言った。
「私も学校行きたくないよ!涼風姉さんが居る時だけ行く!」
またこの子は…。
何でも私と一緒じゃないと嫌がるわね~…。
しばらく歩いていると、ようやく校門を抜けた。
「あっ…あの!朝宮さん!話があるからちょっといいかな?」
男の子が私達の前に立ち塞がってモジモジとしている。
「すご~い…!今週入ってもう15人目だよ…?さすが涼風姉さん…!」
唯香がヒソヒソ声で私に言う。
何で私なんだろう。
私以外にも女の子なんていっぱい居るのに。
優しくした覚えもなければ、話したこともない人に何で告白されないといけないの?
「話あるならここで話して。いちいち場所変えたくないから。」
私は冷たく男の子に言い放った。
「ここで?!…それはちょっと~…。」
他の人達を見ながら男の子は言った。
「じゃあ論外。どいてくれる?私度胸無い人嫌いだから。」
そう言って男の子の前を唯香の手を握って通りすぎた。
「さすがだね~!」
唯香が私を見て言う。
「これくらい普通よ。」
私は唯香の頭を撫でた。