「……始末してくれ…。依頼料ならいくら払ってもいい…!頼む…!理恵の敵を取ってくれ…。」
誠司は涙を流しながら俺の腕を掴んで依頼した。
俺はその腕を取り、集中治療室の中に入った。
そして、理恵の腹に手を当ててアビルの力を流し込んだ。
「…ん…。かお…る…?」
理恵が目を覚まして俺を見ていた。
「ごめんな。でも…もう大丈夫だ。俺が全部片付けてやる。」
「…優がね…私のこと…刺せって言ったらしいの…。優はそんなこと…言わないよね…?」
理恵が掠れた声で言う。
「当たり前だろ?優はそんな奴じゃない。」
「私…許せない…。薫…優の名前を使って…悪いことしてる…奴ら…全部始末…してくれる…?」
泣きそうな顔で理恵が俺に言った。
「任せろ。」
そう言うと、理恵は笑顔になった。
集中治療室を出ると、誠司が近付いてきた。
「俺の能力で傷も全部治ったはずだ。あと少しすれば普通に歩けるようになるよ。」
俺がそう言うと誠司は頭を下げた。
「依頼料はいくらだ?好きな金額を言ってくれ!」
俺は見舞品の中から果物が入った籠を見つけ、その中からリンゴを1個取り出した。
「これだけでいい。理恵の笑顔も見れたしな。」
そう言ってリンゴをかじった。
「そんな…!君もプロだろ?ちゃんと払わないと…!」
「本当にこれだけでいい。俺に構う暇があるなら理恵の顔ちゃんと見ろよ。」
そう言って歩き始めた。
米から辰馬の居場所を聞いてアジトに戻り、俺はソファーに座ってボーッと天井を見上げていた。
負けるかもしれねぇ…。
―『なら向かう先は死か?』―
誰が死ぬかよ。
こんなの…俺1人でも何とかするよ。
―『せいぜい頑張れよ?ご主人様。』―
よしっ…!
用意始めるか…。