桜…。
桜!!
ムニッ。
ムニッ??
変な感触がして目が覚めると、手の甲に誰かの胸が当たっていた。
「なっ…!」
すぐに起き上がって正体を確かめた。
隣にはスヤスヤと眠っている涼風が居た。
「何で人のベッドで寝てんだよこいつ……。」
って…俺生きてんのか…?
―『生きてるよ。よかったな。』―
昨日俺は辰馬に負けて…意識を失ったはず…。
何でベッドに居るんだ…?
お前か?
―『俺がそんなお人好しなことすると思うか?』―
確かに…絶対しないな…。
とりあえずタバコを吸おうと思い、ベッドの横にある棚の上のタバコを涼風に当たらないように取り、タバコをくわえて火をつけた。
優のくれたジッポを見つめた。
絆…か…。
桜は俺にもう一度戦えと言ってるのか?
ベッドから降りて、タバコをくわえたまま下に降りていく。
『薫おはよ~!』
『もう!本当に起きるの遅いわね~!』
いつものようにそう聞こえてくるリビングにはもう誰も居ない。
目に広がる風景は色と音を無くし、陽の光が窓から零れ落ちるだけの殺風景なリビングと化していた。
ソファーに座って灰を落とし、天井を見上げた。
『じゃあ…もし私と優が居なくなったら薫はどうする?』
本当に下らない質問だったんだ…。
こんな日が来るなんて思いもしなかったから。
仕事をして…帰って…たまに飲みに行って…寝て…起きて…。
その生活のどれもこれもあいつらが居たんだ。
だから考えるつもりも…心配することも無かったんだよ…。
だから…今も…一人ぼっちなんだ…。
そう思うと、目から静かに涙が零れ落ちた。
「人間の…涙って機能は…邪魔だよな…?アビル…。」
―『同感だ。悲しみに暮れるのは弱い奴のすることだからな。』―
ふとソファーの前のテーブルに視線を落とすと、『薫』と書いてある手紙を見つけた。