……闇……。


その闇の中で何かを探していた。


光?大切な物?


よくわからないが必死に探している小さい頃の俺が目の前に居る。



一心不乱に何かを探しているんだ…。


多分ずっと見つかっていないんだろうか



涙を流しながら必死に探している。



手伝おうとするが足が動かない…。


声を出そうにも声が出ない…。



何もできない俺は目を小さな頃の自分から反らすことしかできなかった。







『目を反らしちゃダメよ!』


後ろから聞き覚えのある声が聞こえて、振り向いてみた。



桜……。


そこには笑顔の桜が居た。


『本当はわかってるんでしょ?薫が何を探しているか…薫が何を大切にしているか!』


俺は何を探してるんだ…?


何を大切にしてる…?



桜との思い出?皆との思い出?


そう思うと桜は首を横に振る。



『薫が生きている現在(いま)。薫の求めてる大切な物はまた見つかってるはずよ!でも…それは誰かにいつも奪われた…。』


そうだ…。
前は悪魔共に…。


今は辰馬に…。



『薫は臆病だからいつも一人ぼっちだったんだよね?誰かに奪われたくないから…誰かに幸せを壊されたくないから…。』


そうだ…。


俺は奪われるくらいなら何もいらないと思った。


1人で居れば何をするのも自由だ…。


生きるのも…死ぬのも…。



『でもね…薫。まだ絆は残ってるよ?それは大切にしたらまた元通りにきっとなる!もう過去は見なくていいわ。慎司も沙織も私も…薫の現在の幸せを願ってる。

頑張りなさい!私の最高の彼氏なんだからカッコいい所見せてよね!』


桜は変わらぬ笑顔で俺に言った。


『過去はどれだけ思っても過ぎ去った物よ。もう取り戻せないの。でも薫は今を生きてる!何度失敗したって…転んだって…やり直せる!それを忘れないで!』



桜は闇の中へと消えていく。



『またいつかね!愛してるよ薫!』