「いっ…!痛っ…!」



「はいはい!我慢我慢!」



優が撃たれた所に包帯を巻く。



「お前もボロボロだろ?自分の心配しろよ。」



「どっかの誰かさんもボロボロじゃん!」


こいつは…。


人の心配ばかりしやがって。


「俺はいいから。しっかり休め。」



そう言うと、優は俺の部屋から出た。


月明かりが天井を照らしているのを見つめる。


―『薫。お前も人間らしい言葉を言うのだな。昔が恋しくなったか?』―


アビルが俺の心に囁く。


「そんなんじゃねぇよ。俺は元から親の暖かみなんざ知らねぇんだ。だから…知ってる奴が分からなくなるのは腹が立っただけだ。」


―『…ダメだね~。お前もつまらん人間になるか?』―


「冗談…。気の迷いだよ。……俺はあいつを倒す為に全て捨てた…。」


俺は拳を握り締めた。


―『俺も冗談だ。お前も人間であってくれねぇと…楽しみがなくなる。』―



ったく。


どっちだよ。



窓から月を覗いて、今日あったことを思い出す。




ちっ…。


俺も…お優しい人間になっちまったもんだな。



目を瞑って眠りに着いた。