ジャ~……キュッキュッ…。
「ふぅ…終わった。」
いつものように薫と優が食べ終わった食器を全て洗い終わり、手を拭いた。
カバンの中から携帯を取り出して時間を見た。
『10:32』
あちゃ~…。
もうこんな時間か…。
優は先に寝ていて、薫は珍しくリビングでソファーに座ってテレビを見ながら晩酌をしていた。
「何を真剣に見てるの?」
薫の後ろに立って聞いた。
「別に。真剣には見てねぇよ?」
缶ビールを飲みながら薫が言った。
「飲むか?」
まだ空いてない缶ビールを私に差し出す。
「じゃあ…お言葉に甘えちゃおうかな!」
それを受け取ってソファーの端に座った。
『明日はバレンタインデー!皆さん…好きな男の子に愛情たっぷりのチョコを渡しちゃおう♪』
そうだった。
明日バレンタインデーだったんだ。
でも…何で薫こんなの見てんだろ?
全く興味無いって感じだと思ってたのに。
ビールを飲みながら考えていた。
「明日は女にとって大変な日だな。いちいち手作りしてたらめんどくさいだろ?」
薫が私を見て言った。
「私は義理チョコもう買ってあるし大変じゃないよ?」
そう言うと薫は鼻で笑った。
「さすが結城グループの1人娘。お前は手作りなんてしないだろうしな。」
「失礼ね~。手作りチョコくらい作ったことあるわよ!」
…お父様にだけど……。
『オススメはこちらの生チョコ!作り方はとっても簡単なんですよ~?』
生チョコに反応したのか、薫はテレビに視線を戻す。
薫って生チョコ好きなのかな?
薫の表情はとても穏やかで、食い入るようにテレビを見ている。
「私そろそろ帰るね!明日チョコ配んないといけないから!」
ビールを飲み干して薫に言った。
薫はテレビを見ながらヒラヒラと手を振った。