―始末屋―


「すっかり暇だね~…。」


ソファーに座ってテレビを見ながら優が言った。


「わざわざ口に出すなよ。更に暇になるから。」


俺はテーブルの椅子に座ってタバコを吸っていた。


年も開けて、1月も終わりを迎えようとしていた。



雪像の仕事から一切依頼が無く、俺達はただぼーっと毎日を過ごしていた。



「あんた達本当に仕事の浮き沈み激しいわね~。」


向かい側に座ってる理恵が肘をついて言った。


「お前も平日の夕方からこんな所に居るじゃねぇか。」


理恵にタバコを向けて言った。


「仕事終わらせて来てるからあんたとは違うの!」


理恵は煙を払いながら言う。


ボンボンはいいね~…。


そんなことを思いながらタバコを吸った。


「でも…何だか正月ボケって感じ。まだ依頼無くてもいいかな!」


優はこっちを向いて言った。


「金も無限にあるわけじゃないんだぞ?仕事しないとすぐに金は底つくんだから。」


そう言うと、拗ねたのかまた優はテレビに視線を向けた。




コンコンッ…ガチャッ。


ノック音が響いてすぐにドアが開いた。



入り口に立っているのは、パーマがかかった茶髪に、毛皮がついた黒のロングコートを着ていて、顔はサングラスをかけた女性が立っていた。



誰だ?


勝手にドア開けて。


キャリーバッグを転がして俺の方に来る女性。



「久しぶりね~!薫!!」


女性はいきなり俺に抱きついてきた。


なっ…!


「誰だよ!」


俺がそう言うと、女性はサングラスを外した。


「あぁっ!!涼風さん!!」


優が涼風を見て言った。


理恵は初めて見る涼風に驚いている。


「優君も久しぶりね!」


今度は優に抱きつく涼風。


「わっ…!でも…涼風さん…腕…。」



左腕を無くしたはずの涼風の腕にはしっかりと左腕がついていた。



「とりあえず話しましょう。」


そう言って椅子に座った。