「待って下さい…!」
しばらく歩いていると、後ろから麗羅の声が聞こえた。
俺達が立ち止まって振り返ると、走ってきたであろう麗羅が立っていた。
「どうした?」
俺がそう言うと、麗羅は俺達に小さな箱を渡す。
中身を見てみると、銀でできた十字架のピアスが入っていた。
「これかっこいい!」
優の方は銀の羽がついたネックレスが入っていたようだ。
嬉しそうに優はネックレスをつけた。
それを見て俺もつけているピアスを外して、麗羅がくれたピアスをつけた。
「ありがとう。これどうしたんだ?」
「私が作りました。お2人に似合うと思って…。」
こんなにいいものを作れるのか。
兄妹揃って手先が器用だな。
「これは薫さんに…。」
麗羅は俺に箱に入ったチョコレートをくれた。
「気に入ってたようだったので。帰りの飛行機の中でお食べ下さい…。」
「わざわざ気にしなくてよかったのに。」
チョコレートをポケットに入れた。
「あっ…あの……。」
麗羅は顔を赤らめてもじもじし始める。
「また…いつか来てくれる日を…心待ちにしております…。」
「あぁ。また暇な時にでも来るさ。」
そう言ってタバコに火をつけた。
そして、俺達は歩き始めた。
少しだけ振り返ってみると、涙ぐんで手を振る麗羅が見えた。
―飛行機内―
優は早起きをしたからか、隣で眠っていた。
俺は隣でぼーっと景色を見ていた。
タバコ吸えないのってキツいな~…。
口が寂しくなり、ポケットからチョコレートを出し、箱を開けて1粒取り出した。
包み紙を開けて、口の中にチョコレートを入れた。
口の中にはあの時食べたチョコレートの味が広がっていく。
「…甘いな…。」
第5章~消えない雪像~
―完―