―次の日―
俺達は帰り仕度をして旅館の外に出ていた。
見送りには鳴海と十郎さんが来ていた。
そこに麗羅の姿は見えなかった。
「薫さん。優さん。本当に今回はありがとうございました。僕の依頼の為に大怪我をしたり…大切なことに気付かせてくれたり…。あなた達に依頼して本当によかったと心から思います!これは…話していた依頼料です。受け取って下さい。」
鳴海は封筒を俺に差し出した。
俺は封筒を受け取り、金を数えて30万だけもらい、残りの金を鳴海に渡した。
「全部はもらえない。1回失敗してるのに‥長いことこんないい旅館に泊めてもらったからな。全部受け取るのは俺のプライドに反する。それに…これから大変だろ?雪の女神も無くなったんだから…金はあまり使わない方がいい。」
そう言うと、鳴海は申し訳ないような顔をした。
「でも…依頼は依頼ですし…。」
「薫言い出したら聞かないから無駄ですよ!それにこれは2人でちゃんと話し合って決めましたから気にしないで下さい!」
優が笑って鳴海に言うと、鳴海は俺達を見て笑った。
「本当に…お前達は裏稼業に向いてないのう。2人共優しい人間じゃ。その優しさをいつまでも大事にしてもらいたいもんだ。」
十郎が俺達に言う。
「優しくねぇっての。こんな仕事でも俺はプライド持ってやってんだ。完璧じゃないなら金をもらう訳にはいかない。」
「そういうこと!」
俺達がそう言うと、2人は笑った。
「これ…飛行機のチケットです。」
鳴海から飛行機のチケットを受け取った。
「これからは今以上に頑張って…いい作品を作っていきます!その時は見にきてくれませんか?」
俺と優は顔を見合わせて笑った。
「俺達は厳しいぞ?美術作品なんてわからないからな。」
俺がそう言うと、鳴海は笑って頷いた。
俺達はそれを見て2人に別れを告げ、空港に向かい始めた。