宴会が終わり、優を部屋まで連れて行って寝かせた。
俺は眠れずに下に降り、庭が見える縁側で1人、酒を飲んでいた。
視界に入るのは雪景色。
見上げれば満月が雲の切れ間からその姿を覗かせていた。
粉雪がパラつき、それが冬の寒さを強調していた。
少し酒が回ってきてるからか、体温が上がり、あまり寒さを気にせずに、ただ頭上の月を仰ぎ見ていた。
「なぁアビル。」
―『何だ?』―
「俺の守りたいものは…どれだけ強くなれば守れると思う?」
―『知るかよ。俺に聞くことじゃないだろ。俺様は充分強いからな。』―
「聞いてみただけだ。」
酒を飲み干して、タバコに火をつけた。
しばらくすると誰かが近付いてくる足音が聞こえた。
「薫さん?まだ起きてらしたんですか?」
足音の正体は旅館の浴衣を着て、カーディガンを羽織った麗羅だった。
「眠れなくてな。お前は?」
麗羅は俺の隣に座って、酌をした。
「変な時間に起きちゃったんで散歩しようかなって思って。」
酒を一口だけ飲んで、タバコを吸った。
麗羅は月を見上げている。
「今日はクリスマスですね!ホワイトクリスマスですよ!」
クリスマスだったのか。
最近日付感覚がおかしくなってるな…。
「ここじゃホワイトクリスマスなんて珍しくないんじゃないのか?」
「珍しくないですけど‥誰と見るかによるんですよ?」
そう言うと、麗羅は顔を真っ赤にしてうつむいた。
「俺なんかと見てていいのか?」
俺は笑いながら言った。
「なんかなんて‥。薫さんと見れて私は…嬉しい…ですよ…。」
うつむいたまま麗羅は言った。
「俺とじゃせっかくの景色も色褪せてしまうさ。だから来年は大切な人と見れるように、扇杜から祈っててやるよ。神様って奴にな。」
そう言ってタバコを吸った。
「…ありがとうございます…。」