旅館に戻ると、宴会場に案内された。
そこには豪華な料理がたくさん並んでいて、案内された席に座ると鳴海がお猪口に日本酒の熱燗(あつかん)を注いだ。
酒を一気に飲み干すが、さっきのこともあってか楽しむのは難しかった。
それを精一杯顔に出さないようにして、その場を楽しもうとしていた。
―2時間後―
「薫~!酔っちゃった~!」
鳴海と話していると、優が後ろから抱きついた。
「だろうな…。わかったから離れろよ。俺鳴海と話してるから。」
そう言って優を引き離した。
「ちぇっ…。」
優は拗ねた顔をして、麗羅の方に行った。
「全く…。飲めないなら飲むなっていつも言ってるのに。」
お猪口の酒を飲み干して言った。
鳴海がすぐに酒を注ぐ。
「まぁまぁ。いいじゃないですか。長く続いたお仕事が終わったんですから…今日くらいは多少ハメを外しても罰(ばち)は当たりませんよ。」
確かに。
優には今回迷惑かけたし…今日くらいは見逃してやるか。
「それに麗羅も優君と遊んで嬉しいでしょうし。」
鳴海は笑いながら言った。
「嬉しいか?あいつと遊んで。疲れるだけだと思うが。」
タバコをくわえて火をつけた。
「麗羅は昔から天真爛漫で元気な子だったんですが‥ある日家から出なくなってしまって…。1年前までは人と話すのもままならい状態だったんです。」
「イジメか何かか?」
鳴海は静かに頷いた。
「最近になって教えてくれました。その時私達の両親は他界していて…肝心の私も雪像作りに夢中だったので麗羅に構ってあげれず…麗羅はずっと1人で抱えてたんです。麗羅がこの旅館にお世話になってからは徐々に笑顔が戻ってきて、また昔のように笑ってくれるようになったんです。」
あの麗羅にそんな過去があったとは…。
意外だな。
煙を吐いて、灰皿に灰を落とした。
