雪の女神は砕けた。
最後の言葉を鳴海に伝えて。
届いてよかったな…。
「ありがとうございます…!あなた達じゃなければ…僕は何も気付けないままでした…。」
鳴海は俺達に深々と頭を下げた。
「よかったです!気付いてくれて!」
優が鳴海に笑顔で言った。
鳴海はどこか寂しげな顔をしていた。
自分が始末しろって言ったのに。
「そんな顔すんなよ。気付けてよかったじゃねぇか。このままずっと壊れずにあったら‥お前は自分の罪に気付くことができなかったんだ。
永遠なんて所詮は人の夢。儚いものだ。
そこに終わりがあるから存在の大切さを人は理解できるんだ。
それを糧に進んでいけばいい。それが砕けた雪の女神にしてやれることだと俺は思うがな。」
俺がそう言うと、鳴海は涙を拭いて俺を見た。
「薫さんは‥裏稼業をしている人とは思えませんね。とても優しい方です。」
鳴海は俺に笑って言った。
「そんなお優しい人間じゃない。勘違いすんな。」
「照れない照れない~!嬉しいくせに~!」
優が俺の頬をつついて言う。
「照れてない。いい加減に‥しろ。」
優の顔面に頭突きをした。
「薫さん。怪我もしていますし、今日も泊まられた方がいいんじゃないんですか?」
麗羅が俺の方に来て言った。
「そうだな。そうさせてもらうか。」
ゾクゥッ!!
異様な気配を感じて後ろを振り返った。
何だ‥今の‥?
「どうしたの薫?」
優は気付いてないようだった。
気のせいか?
―『気のせいな訳ないだろ?この気配は…あのカスの気配だ。昨日行った魔具屋の方から感じるぞ。』―
アビルからそれを聞いて、魔具屋の方に走り始めた。