「待ってくれ!最後だなんて言わないでくれ…。やっと気付けたんだ…。君が必要なんだ…。」
僕がそう言うと、雪の女神は微笑んだ。
―『ありがたいお言葉ですが…これは天命です。もうどうしようもありません…。』―
僕は何てことをしていたんだ…。
雪の女神ができてから…僕は注目されてきた。
最初は嬉しかったけど、ある時に気付いた。
注目されているのは僕じゃなくて……雪の女神なんだって。
それから思うように作品が作れなくなった。
何を作っても評価されるのは雪の女神だった。
自分が作った作品を超えられないことに苛立って、何度も壊そうとした。
僕は……自分しか見えてなかった。
だから何も気付かずに今まで…。
―『そんなに思い詰めないで下さい。気付かなかったのは鳴海さんの罪ではありません。この3年間…私は鳴海さんと共に居れて嬉しかったです。それだけで私は充分ですから。』―
ピキッ…ピキキッ…。
雪の女神にヒビが入っていく。
「待ってくれ!僕も…君と居れて本当によかった!君のお陰で…見れない世界が見れた…。本当にありがとう…!そして…今まで苦労をかけてごめんなさい…。」
雪の女神は僕を抱きしめた。
感覚はないが、心が温かくなっていく。
―『気にしないで下さい。最後に鳴海さんと話せて…私は嬉しく思います。こちらこそありがとうございます。』―
ピキキッ…パキッ…。
「またいつか…どこかで会おう…。その時は絶対君に気付いてみせるから…。」
僕がそう言うと、優しく微笑んでくれた。
パキパキッ…パキィンッ!
雪の女神が砕けた瞬間に、目の前に居た雪の女神もすぅっと消えていった。
空からは粉雪が降り、まるで雪の女神が泣いてるかのように静かに僕に降り積もる。
僕の目からも静かに涙が零れ落ちた。
さよなら…僕の女神…。