わからない…。
彼等が言ってることが…。
一体この作品に何があると言うんだ。
確かに不思議な雪像だけど……あれには悪魔が取り憑いてるんじゃ…。
―『鳴海さん……今までありがとうございました……』―
女の人の声…?
「薫さん!待って下さい!」
僕がそう言うと、振りかぶった腕を降ろした。
「どうした?」
薫さんは僕を見て言った。
「どこからか声が…聞こえたんです。」
僕は雪の女神をもう一度見てみた。
あの声…雪の女神から…?
……ダメだ…。
やっぱり何も見えない…。
諦めかけたその時、雪の女神に人影が浮かび上がっているのが少しだけ見えた。
あれは?
その人影に集中して見ると、人影が鮮明に見えてきた。
「き…君は…。」
あの時…遭難した時に会った女の人…。
―『気付いてくれたんですね…。嬉しいです。』―
少し微笑んで僕に言う。
「何で…君は…?」
僕は雪の女神の方に近付いた。
―『私は…氷を扱う天使なんです。あの時鳴海さんは何も知らずに…私のような者に着ていた服を渡してくれた。それが嬉しくて、鳴海さんを助けました。』―
じゃあ…気付いた時に自分の部屋に居たのは…この人のお陰だったのか…。
―『その優しさに触れて…私は鳴海さんの側に居たいと思い…この雪像を彫らせました。そして…鳴海さんの言ってくれた一言で、私はこの雪の女神に乗り移りました。
でも…それが鳴海さんの迷惑になっていたんですよね?』―
全ての辻褄があった。
あの時、一心不乱に作品を彫り続けた時も…雪の女神が何をしても壊れない理由も…全部わかった。
―『大丈夫です。私はもう放っておいても壊れます。氷の天使なので…夏の暑い日や燃え盛る炎…高い場所からの衝撃を耐えてきた私は…もう寿命が来てしまいました。
だから…最後にお礼を言いたかったんです…』―