旅館に着くと、玄関の掃除をしていた麗羅が俺達の方に来た。
「大丈夫ですか?!2人共血だらけ…」
優は雪の女神を置いて、肩を回した。
「俺達は大丈夫だ。それより…ここに鳴海を呼んでくれ。」
俺がそう言うと、鳴海が玄関の方から出てきた。
「終わったんですか?」
もう居たのか。
「仕事に行ってくるって言ってましたので、私が呼んでおきました。」
さすが麗羅、気が利くな。
「優。」
「はいはい!」
優は雪の女神を包んでいた布を取った。
「これは…。どういうことですか?僕は始末してほしいと依頼したはずです!」
雪の女神を見て、鳴海が俺にそう言った。
「始末するのは簡単だよ。俺達は契約者だ。こんな物…力を使えばぶっ壊せるさ。」
そう言って、タバコをくわえて火をつけた。
「だったら何故?」
麗羅は心配そうに鳴海を見ていた。
「俺達がそうしなかったのは…お前に気付いてほしいだけだ。この雪の女神に隠された秘密をな。」
鳴海はわからないような顔をする。
「これは‥僕が作った作品ですよ?隠された秘密なんてあるわけない。」
やっぱり気付かなかったか。
俺は雪の女神を見た。
ごめんな?
お前の願い‥叶えられなくて…。
「いいんですか?本当に壊して…。鳴海さんが作った作品だからこそ見える物があると思います!もっと目を凝らしてよくこの作品を見て下さい!じゃないと…可哀想ですよ…。」
優が鳴海に言った。
タバコを吸って灰を落とした。
「優…仕方ないさ。もう諦めろ。」
「でも…!」
俺は悪魔の腕にして、左手を振りかぶった。