組長室に向かう薫の後ろ姿を、悲しそうな顔をして見つめる理恵ちゃん。



さっきのこと、悪いって思ってるのかな?


「大丈夫だよ。薫は少し昔に傷を負ってるだけだから。」


理恵ちゃんにそう言うと、俺の方を見た。


「薫は俺と違って悪魔を背負ってるから‥皆に怖がられてきたんだ。俺はパッと見普通の人間だから契約者ってのは分からないけど…薫はあの悪魔と契約してるからどうしても気配で普通じゃないって分かるんだ。

だからいろいろ苦労してたみたい。どこへ行っても蔑まれたり‥石を投げられたり‥利用されたりで‥薫は心に深い傷を負ってしまったんだ。

人のことを信じなくなって‥まともに話をするのは俺と情報屋の米さんって人だけ。

薫は本当は優しくて不器用なだけだから、理恵ちゃんも勇気を出して触れてみて?

薫の傷だらけの心に。」



理恵ちゃんは思いつめた表情でうつむく。


「……本当は怖いよ…。こんな人間が…私の知らない世界には居るんだって…。私はまだ分からない…あの人も…優も…。」



まぁ、そりゃそうか…。


俺達みたいな人間兵器を見て、平気で信じる方がどうかしてる。


「ごめん。今の忘れて!早く行こう!」



理恵ちゃんは俺の腕を掴む。



「分からないから…ちゃんと見るよ。あなた達のこと…。ちゃんと見て…ちゃんと触れるから!」



あらら。


この人どうかしてる方みたいだ。



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『このガキ変な目してやがる!』


『お前気持ち悪いから近寄るなよ!』


『あのガキ…利用しがいがあるわ。』


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まぁ、でも……



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『お前…俺と同じだな。天使も悪魔も違いなんてそんなに無いみたいだ。

自分1人が不幸だって顔してやがる。

ダセェ奴だ。

俺もそんな顔してると思うと…何かムカつくわ。』



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「ありがとう。」



こういう人は嫌いじゃないや。


理恵ちゃんの頭に手を置くと、理恵ちゃんは優しく微笑んだ。