始末屋


和志の殺気に思わず後ずさる。


……怖い……。


その思いが脳裏をかすめる。



初めてだ…。


戦いの中でこんなにも恐怖を感じるのは……。



和志は俺の方に歩いてくる。



俺はそれを見て後ろに下がる。


「どうしたの?来ないならこっちから行くぞ?」



和志は殴りかかってくる。


しゃがんで避けて、逃げ出した。



俺は何で逃げてるんだ…。



わからない…。
ただ…わかるのは逃げないと殺される。



和志は俺を追いかけてきて、殴り飛ばした。


それでも構わず俺は逃げようとしたが、その度に殴られ続けた。






すると、頭の中で映像が流れてきた。




慎司と遊んでいる時や、沙織に取れたボタンをつけてもらってる時。


そして、桜と一緒に居た日々…。



楽しかったな…。


幸せだったな…。



俺は今…何でこんな日々を過ごしているんだろうか…。


あの幸せな日々はもう二度と来ないんだ…。



映像は俺がアビルと契約した日に変わった。



―「薫…。私…薫のこと…ずっと愛してる…!」―


泣きながら言う桜…。


そうだ…デスアビスの支配から無理矢理脱した時か…。


―「薫!大好きだよ!!」―


アビルが封印する少し前か…。


桜は最後まで笑って言ってくれたんだ。


俺を心配させないように…。




そうだよ…。


俺は幸せな日々を取り戻したくて、今まで頑張ってきたんだ…。


どんな辛い日々も受け入れて…それでも頑張ってきたんだ…。



アビルの言う通りだ…。



俺はデスアビスを殺せなかった…。


桜を救えなかった…。


たった一度の失敗で……俺は戦うことに怯えて、震えていた。



心のどこかで…これ以上頑張ったとしても同じことを繰り返すだけだと思ってた。


でも諦めたら…桜は一生救えない…。



俺以外…誰も救えないんだ…。



そう思った瞬間に映像が途切れた。