―そして現在―
カラーン♪
BARの扉を開け、カウンターの方に向かった。
相変わらず盛況してるな。
たくさんの裏の住人が溜まっている。
「いらっしゃい!久しぶりだな薫!」
中年風の少し威厳のあるオールバックが目立つマスターが笑顔で俺に言った。
俺はマスターの前に座った。
マスターは慣れた手付きで灰皿を出す。
「キープまだある?」
タバコをくわえて言った。
棚を探って、俺のウイスキーのボトルを目の前に出した。
「上客のボトルキープを捨てる訳ないだろ?」
マスターは笑って言って、グラスに氷を入れ、ウイスキーを注いで俺に出した。
「どうだ?仕事の方は。」
俺はジッポでタバコに火をつけた。
「ダメだな。しつこく依頼してくるヤクザ連中は居るが言い値を払う奴が居ない。それこそ…上客が来ないかなって思ってたところだ。」
グラスを傾けながら言った。
「あんた達シビアだからね~…。裏の連中相手にすれば最低500万は払なきゃ仕事はしない…表の連中や裏の力が無い奴らにはいくらにするかの相談に乗る。俺はこの裏扇杜に店を出して10年になるが…あんた達のような商売法聞いたことなかったよ!」
グラスを拭きながらマスターが言った。
「別に。誰にでもそういう訳じゃない。そこそこ金持ってる奴にはふっかけるし。ただ…弱い奴らや貧乏人から金取っても仕方ないだろ?」
俺がそう言うとマスターは大声で笑った。
「弱い奴らや貧乏人の依頼を乗るっていうのがスゴいのさ!普通は相手にしないさね!」
確かに……。
まぁ、そこまで鬼じゃないからやってるだけだけどな。
「おい…あれ…扇杜の死神じゃねぇか?」
後ろのボックス席からの話し声が聞こえてきた。
「こそこそ人のこと言うなっての…気分悪い…。」
「まぁまぁ!有名だってことだよ!」
そう言うマスターの顔は少し焦りを感じているようだった。
俺は気にせずにグラスに入ったウイスキーを飲んでいた。