その後は皆で酒を飲んでいた。


久しぶりに楽しい夜。


楽しい誕生日。



この日だけは普通に戻っていた。


仕事も…悪魔も…今までも……全部忘れて楽しんでいた。




「あれ?そういえば…あんなカバン持ってた?」


優がカバンを指差して言った。


あぁ…忘れてた。


「もらった。」


「ふ~ん。気になるから開けていい?」



優がキラキラした目で言った。


理恵も気になっているみたいだ。



「開ければ?勝手に中身取るなよ?」


そう言うと、優と理恵はカバンの方に向かった。


絶対驚くよな…。


ビールの缶を傾けながらそう思った。



「「えぇっ?!」」



やっぱり驚いたな。


予想通りのリアクションに少し笑ってしまった。



「これ…あんた…万札だけじゃないけど1000万はあるわよ?」


理恵がカバンの中を見ながら言った。


「これどうしたの?!まさか…買い物のついでに銀行でも襲ったの?!」



優が俺の方に来て言った。


俺は優にデコピンをした。



「銀行襲ってたらそんなしょうもない額持ってこねぇよ。」



「じゃあどうしたの?!」



俺はどう言えばいいか考えた。



「タバコ1本がそうなった…かな。」


結局めんどくさくなって適当に言った。


「そんな訳ないじゃん!これどうしたの?」


優が俺の肩を揺らしながら聞く。



本当なのに…。


俺は反応するのがめんどくさくなり、ビールを飲んでいた。





薫のわらしべ長者



―完―











「ねぇ~!ねぇ~!」


相変わらず肩を揺らしながら聞く優。


「うるせぇよ。」


優に軽くビンタした。