始末屋


まぁ…優のことだから…たまには外に出て気分転換でもしてこいってことか。


あっ。
そういえばこれ。


俺はポケットからさっきのオモチャの指輪を取り出した。



いらないから捨てるか。


ゴミ箱に入れようと思ったが、さっきのホームレスの顔が頭によぎった。



でも、俺が持ってても…しょうがないよな。




「あぁっ!!」


ゴミ箱に入れようとしたら、どこかから声が聞こえた。



声のする方を見ると、スーツを着た中年の男が俺を指差していた。



何だ…?



「君!ちょっと待っててくれ!」


そう言い残し、どこかに消えていった。



ちょっと待っててくれって言われても…


何の用かくらい言えよ。




しばらくすると、さっきの男が綺麗な女性を連れてきた。



何だよ…。


その女性と男が俺に近付いてきた。



「あっ!これです!間違いありません!」


女性は俺が持っているオモチャの指輪を見て言った。



これが一体何だって言うんだ?


複雑な顔をしているのがわかったからか、女性は説明し始める。



「突然すいません!実はその指輪…私のなんです。3日前に落としてしまって…ずっと探してて…。」



「そうなんだ。じゃあ…はい。」



俺は女性に指輪を渡した。



「ありがとうございます!この指輪…今は亡き父親からもらった初めてのプレゼントで‥すごく大切な物だったんです!」


なるほど…あのホームレスが食べ物でも探しに出てきてて…偶然見つけて拾ったってことか。


それにしても…よっぽど大事な物なんだろう。


女性はすごく嬉しそうな顔をしていて、さっきの男もそれを見守っていた。